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対人関係精神分析を学ぶ

関わるところに生まれるこころ

一丸 藤太郎 著

刊行年月日:2020/12/15
ISBN:978-4-422-11755-3
定価:本体3,200円+税
判型:A5判 210mm × 148mm
造本:並製
頁数:308頁

 対人関係精神分析とは、ハリー・スタック・サリヴァン、クララ・トンプソン、エーリッヒ・フロム、そしてフロム=ライヒマンの4人によって創始された精神分析の一つである。フロイトと彼の後継者たちによる厳密に構成された精神分析のやり方をそのまま踏襲するのではなく、もっと自由に、さまざまなやり方で分析を行おうとした彼らが、自身の分析療法を検証し互いに議論を重ねながら創り上げていった方法である。
 フロイトの精神分析を絶対的な信条としなかったために、彼らは「ネオ・フロイディアン」「フロイト左派」などと呼ばれ、正統派フロイディアンからは距離を置かれた。日本では、中井久夫先生の功績によって創始者の一人であるサリヴァンの評価は高く、またフロムの著書も多くの読者を得ている。しかし、サリヴァンやフロムを精神科医や社会学者としては知っていても、精神分析家として認知している人は少ないのではないだろうか。「精神分析」という土壌は同じでも、それほど彼らとフロイディアンとは、こころの捉え方や分析療法についての考え方が異なっていた。
 本書は、ニューヨークに留学し、対人関係精神分析のメッカであるウィリアム・アランソン・ホワイト研究所で訓練を受けて精神分析家の資格をとった著者が、正統派フロイディアンとの違いを鮮明にしつつ、対人関係精神分析とはどういうものかを人間味あふれる筆致で綴った魅力的な心理臨床の一冊である。全編を通じて、著者の人間観や心理臨床家としての根本的な姿勢・考え方が語られ、心理臨床に対する情熱を今なお強く感じさせてくれる。留学当時のエピソードで語られる著名な臨床家たちの姿や言葉は、この年齢の著者でないと決して書けない内容であり、なかでも、元クライエントと共に自らの分析療法の振り返りを詳細に記述した第8章「私の精神分析療法」は、若い臨床家たちに資するところの非常に多い内容になっている。

目  次


第1章 精神分析事始め
    ―─ホワイト研究所での精神分析の訓練
はじめに
1 ホワイト精神分析研究所の沿革
2 訓練生と訓練スタッフ
3 全体的な印象
4 精神分析家の資格を得るための訓練の概要
5 「講義、ケース・カンファレンス、クリニカル・ミーティング」
6 クリニックでの経験
7 スーパーヴィジョンの経験
8 個人分析について
おわりに

第2章 心理療法における技術の組織化と個性
はじめに
1 心理療法の進め方が個人によって異なるということ
2 心理療法における技術
3 「癖」ということと「個性的」ということ
おわりに

第3章 「わかる」ということ
はじめに
1「わかる気がする」から「わかる」へ
2 unfamiliarなものへの「不安」と「好奇心」3 「驚く」能力
4 「わかる」ということ
5 よく似ているほど「わかりにくい」
6 「わかった」と思えたことを伝えてみる
7 「わかる」レベル
おわりに

第4章 クライエントの訴え、臨床像、症状
―時代的変遷とそれに応じた心理療法の工夫
はじめに
1 ニューヨークでの心理療法の経験
2 事例
3 訴えや臨床像の多様化と個別化
4 心理療法の経過
おわりに

第5章 「フロイディアン」と「対人関係精神分析学派」
     ―分析家とクライエントの関りの観点から見た特徴
はじめに
1 分析家の役割とクライエントへの関わり方
2 クライエントと分析家の関わり
3 分析家は投影の対象か現実の人か
4 もくろみと結果
5 防衛としての「ブランク・スクリーン」
6 分析家は、ロールシャッハ・テストの図版
おわりに

第6章 関わるところに生まれるこころ
    ―対人関係精神分析学派の立場
はじめに
1 こころは、どこにあるのか
2 「孤立したこころ」に基づく心理療法と「関わるところに生まれるこころ」に基づく分析療法
3 参与しながらの観察(participant observation)※括弧内級数下げる
4 データの妥当性
5 行動主義、プラグマティズム、実証主義
おわりに

第7章 「語ることを、語られるままにわかろうとすること」
はじめに
1 スーパーヴィジョンの経験から
2 精神分析における学派とは
3 フロイディアン
4 サリヴァンのアプローチ──ブルックの体験
5 フロイディアンの精分析療法とサリヴァンのアプローチ
6 「語ることを、語られるままにわかろうとすること」
おわりに

第8章 私の精神分析療法
       ―クライエントは、私との分析療法をどのように体験したのだろうか
はじめに
1 事例
2 本稿を作成した意図と経緯
3 クライエントに浮かんだ全体的な印象
4「『私の精神分析療法』のクライエントの印象と疑問
5 分析療法の経過について
6 「急激に成長した経緯」
7 気づいたことを実践で試す
8 終結にあたって
9 分析療法を終えた今、思うこと
おわりに

終章 アメリカにおける精神分析の動向とわが国の精神分析の現状とこれから
1 ニューヨーク州で始まった「精神分析家」の資格制度
2 わが国の精神分析の現状とこれから

文献

※著者紹介は書籍刊行時のものです。

[著]一丸 藤太郎(イチマル トウタロウ)
1973年、広島大学大学院教育学研究科博士課程後期単位取得退学。1976年~1979年:The William Alanson White Institute of Psychoanalysisで精神分析の訓練を受ける。1993年、博士号(心理学)取得。1998年、精神分析家の資格取得。現在、ももやま心理相談室主宰。精神分析家(ホワイト精神分析研究所)、臨床心理士、日本精神分析学会認定心理療法士、日本精神分析学会認定心理療法士スーパーヴァイザー。
<主な著訳書>『心理療法の鍵概念』(共訳編、誠信書房、1976年)、『夢の臨床的利用』(共訳、誠信書房、1987年)、『心理療法における抵抗』(監訳、創元社、1997年)、『精神分析的心理療法の手引き』(共編著、誠信書房、1998年)、『精神分析における未構成の経験』(共監訳、誠信書房、2003年)、『精神分析における解離とエナクトメント』(監訳、創元社、2014年)

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