おすすめの新刊や話題の書籍を、教育・図書館関係者さまの推薦のことばとともにご紹介します。
車両、列車、ダイヤ、駅、きっぷ、乗務員、運転のしかた、信号・標識の読み方など、鉄道に関するあらゆるテーマを蘊蓄たっぷりに解説した鉄道基本図書の決定版! 初心者からベテランまで、楽しみながら鉄道の基本が学べる。
世界の木の実の中から、ビジュアルや植物の営みのふしぎさを優先して厳選した約300種を、美麗で迫力ある撮り下ろし写真とともに紹介する。植物分類学の変遷や進化について、世界の木の実分布や活用方法などのコラムも充実。
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子どもの本に関わる質問や疑問にQ&A形式でお答えします。内容は月替わりで更新いたします。
※2013年8月刊行『子どもの本100問100答』(一般財団法人大阪国際児童文学振興財団編)より抜粋
(2021.1.15更新)
子どもだけでなく、大人も殺人事件が起こる推理小説やこわい映画などが大好きです。それは、誰でも心のなかに自分でもよくわからない不安や恐怖があり、それをしずめたり、解放したりしようとするからです。「こわいもの」にふれることが、こころの安全弁となっていると考えられています。
「こわい本」を好んで読むのにもいろいろな段階のあることや、読む必然性のあることがわかれば、「こわい本」を積極的にすすめることもできます。
古来、人々は、神話や昔話*1などの物語を通じて、恐怖や不安を克服し、力を得てきました。恐怖に姿が与えられて、物語という形で表現されると、人間の衝動のうちでも、もっともこころの奥深くにあって野蛮な衝動である恐怖は、その内にあるエネルギーを失ってしまいます。物語に仕立てることで、想像の世界での安全な体験となり、聞き手は安全なところにいて、恐怖を解放し、楽しめるのです。「こわい本が読みたい」のは、人間としてごく自然な要求だといえます。
なかには、こわがらせるために、扇情的な物語を繰り出して、恐怖をしずめるどころか、駆り立て、不安を増強させて、悪夢を見させるような作品もあるので要注意です。特に絵は、一度脳裡に焼き付くと、なかなか離れなくなります。必要以上にグロテスクで恐怖をあおっているものはさけましょう。
年齢と大きく関係しますが、幼い子どもほど、読後に安心できる結末が大切です。人生体験を重ねるにつれて、理解しがたいことが世の中にたくさんあるのがわかるようになりますが、それでも物語の結末がおさまるところにおさまることで、安心感や安らぎが得られるのです。
10年間の幼稚園の文庫活動の記録をもとにした報告*2に、「こわいほん」を好んで借りる子どもの具体例と、こわさのある『すてきな三にんぐみ』*3、『おばけやしき』*4、『ピエールとライオン』*5、『すいみんぶそく』*6がなぜよく読まれるのかの分析がまとめられています。また、「こわいほん」のもつ要素として「夜のイメージ」「狙われている感覚」「ちがう世界へ入っていく」「こわいものがでてくる」「孤独」「食べられる」「身体変化」と7つの項目をあげ、こわい度合の軽いものから重いものへと、「こわくておもしろい絵本」「想像から出てくるイメージが描かれたもの」「野生を触発するもの、内在する野生への意識」「内界の冒険を扱っているもの」「不安や孤独など、子どもの心理に迫るもの」「死につながるこわさが描かれたもの」と6段階のこわさを提示しています。
段階を追うにしたがって、それを求める人数が減っていきます。遊び感覚で読める「楽しいこわさ」が多数の子どもに受け入れられているのに対して、「死のこわさ」と対面するような作品を求めるのは少数です。このことは、「子どもの本」全般にもいえると思います。
「こわい本」のなかでもっとも出版数が多いのは「幽霊物語」ですが、その多くは、「幽霊」をキャラクターとして「使用している」だけの作品です。「本当はこわくないおもしろい幽霊もの」です。幽霊が幽霊である必然性のある作品は、意外なことに、20世紀後半、フィリッパ・ピアス*7やロバート・ウエストール*8などの作品が出るまでほとんどありませんでした。
*注1.野村泫『昔話は残酷か グリム昔話をめぐって』東京子ども図書館、1997 *注2.小澤佐季子「こわい絵本の魅力」三宅興子編者『絵本と子どものであう場所』翰林書房、2006 *注3.トミー・アンゲラー作、いまえよしとも訳、偕成社、1977改訂 *注4.ジャン・ピエンコフスキー作、でんでんむし訳、大日本絵画、2005新装 *注5.モーリス・センダック作、じんぐうてるお訳、冨山房、1981 *注6.長谷川集平作、童心社、1996 *注7.『幽霊を見た10の話』高杉一郎訳、岩波書店、1984 *注8.『かかし』金原瑞人訳、徳間書店、2003
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