14.費用対効果

努力した分だけ報われる
・・・努力した分しか報われない
かけたお金の分だけ報われる
・・・かけたお金の分しか報われない
かけた時間の分だけ報われる
…かけた時間の分しか報われない
愛した分だけ愛される
・・・愛した分しか愛されない

そんな社会に住みたいですか?


「費用対効果」という耳障りな音感を持つ言葉が、昨今声高に叫ばれるようになってきた。僕的には(!?)、コスト・パーフォーマンスというこれまでの洋物言葉の方がシャレていて好きなのだが、この口の中に石でも含んで発音しなければならないような、ごつごつした和製漢語の方が、語感が伝えられるとでも思われたのかもしれない。

それにしても、確実にかけた費用だけ見返りが期待できる社会なんて、面白くもなんともないと思うのは僕だけだろうか。掛け率1:1の懸賞や博打なんて、いったい誰が好き好んで買うの? そりゃあ誰だって損すりゃあ落ち込むだろうけど、絶対に損しない買い物っていうのもまた、面白くもなんともないんじゃないだろうか。皆、最低限の努力で最大限の成果を得ようとしているんでしょ? 予想外の配当があったら、とってもハッピーじゃない? 勉強時間の分だけ点数がつくみたいな、そんなテストを受けたいだろうか?


問題は、カウンセリングの費用対効果はどうかということだ。かけたお金、時間、労力以上に効果があるものなの? 永らく精神分析的精神療法をやっていたアメリカの有名な病院が、投薬で著効が見られた患者に、「今までの分析費用を返せ!」と訴えられ、敗訴して、今では昔日の隆盛は見る影もないという。

EBM(※注)の風潮に身を任せ、「30%の治癒率です」という宣告を高いとも低いとも判断しかねて、「ああそうですか…」と受け流し、さりとてセカンド・オピニオンを求めに行くほどの気概もなし。こんなことなら「御先祖様が寂しがってる。墓参りなさい」という心霊治療師の確信に満ちた御託宣の方がよっぽどましと、思うのは僕が時代遅れになったから?

空しい努力の挙句の果てに、試行錯誤の意味に気づく……こんなpricelessな治療がまかりならんと言われるなら、カウンセラーなんて辞っめよっかな〜と思う昨今です。

EBM;Evidence-based Medicine根拠に基づく医療。権威者による少数事例に基づくのではなく、コンピュータの普及によって可能になった、膨大なデータをもとに確率的に効果の高い治療法を選択しようという昨今の医療の風潮。