12.星から来た女(ひと)

「私はねえ、本当は数億光年向こうの星の残光なの…」
「だから、私の星ではもう、私はとっくの昔に消えてるかも知れない…」
「実体のない影の光…光の影じゃないの」
「何もかも通り抜けるし、何も引っかからない…だから何も感じない」
「残光に生きる意味なんてない…光っているだけ」
「消えたら終わり、何もなくなる…」

「ほらだから、ここにこんな風に見えてる…」


いろいろなものを持ちながら、持たずにいるのと同じように生きている女(ひと)。
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…


時に美味しいものを食べ、時にセックスして、時に美術館巡りをする。それから、
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…
朝起きて、髪を梳かし、仕事に出掛け、帰ってきてお風呂に入り、窓の外を見て、寝る…


そんな女(ひと)に、何をすればいいのか分からないから、傍にいる…いてもいなくても、いっしょなのは分かっている…分かり切ってるけれど、それだから傍らにいる。

消えそうな、淡い、青純(あおにび)色の残光…自らは残光というけれど、光っているには違いないから、自分では光れない僕は、傍らで鏡映(ミラリング)する。とりあえず彼女が消えるまでは、そこにいる証しとして。消えてからは…そう、消えたらどうしよう?  フロリダにアシカ大王を探しに行くか?  nのフィールドでローザミスティカを護る?  トレパネーションを受けるのもいいかも(※注)…まあそれは、そのとき考えよう…そう思いながら、今は傍らにいる。

「フロリダにアシカ大王…」は鈴木志保『船を建てる』の中の一節。「nのフィールド…」は、PEACH-PIT『Rosen Maiden』より。「トレパネーション」は、山本英夫『ホムンクルス』で主人公が受けた手術のこと…どうでもいいことですが…。あ、ちなみに全部マンガです。