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※2013年8月刊行『子どもの本100問100答』(一般財団法人大阪国際児童文学振興財団編)より抜粋
(2024.10.15更新)
幼児にとって、劇はごっこ遊びの延長です。自分以外の誰か(または何か)になって、いつも生活している空間をほかの空間に見立てることは、空想力をのばすことになり、せりふを言ったり、体を動かしたりすることは、言葉や体の感覚を磨くことにつながります。劇という物語世界で体験することと日常生活に共通点を見出すことで、人間関係のありようや生活習慣について学びます。ごっこ遊びのなかで、子どもたちは全員が自分は主役だと思っているように、保護者に見せる劇のなかでも、全員が主役であると思える演出が必要です。そして、劇の発表は、それを保護者の前で発表することによって、演じる側にとっては達成感につながり、保護者にとっては子どもの成長を見る機会になります。
劇活動には、見せるための「劇」と、自分たちで物語を遊ぶための「劇あそび」があります。劇あそびは、指導者が昔話や絵本などを紹介し、一つの物語を楽しんだ後、その物語をさまざまな役になりきって体験してみる活動です。子どもだけで行うごっこ遊びに指導者が入って演出をしたり、方向づけをしたりして、一つのまとまりのある物語を体験させます。劇あそびの本としては、『劇あそびの基本』『劇あそびを遊ぶ』*1や『日常保育の劇あそび』*2があり、劇あそびの意義、具体的事例、子どもの反応等が書かれています。
また、劇あそびから発表への過程を書いた本としては、『あそべあそべ発表会いつものあそび・劇ごっこからはじめる』*3などがあります。
幼児が演じる劇の脚本は、保育関係の出版社であるチャイルド本社、すずき出版、ひかりのくに、フレーベル館、メイトなどから、『昔話で楽しむ劇あそび1、2』*4や『みんなでつくろう発表会』*5などが出版されています。多くの作品が昔話や絵本から題材をとっていますが、生活で経験したことを元にしたオリジナル作品も含まれています。劇の演出方法、舞台装置、照明等についての基礎的な知識を説明しながら、劇づくりを紹介した『子どもと創る演劇』*6も役立ちます。
幼児の生活発表会で発表する劇でもっとも重要なのは、子どもたちが楽しんで日ごろの成果を見せることです。そういう意味では、脚本にとらわれることなく、子どもたちが興味をもった内容を劇につくりあげて発表することが望まれます。遊びのなかから劇に仕立てて行く方法も考えられますし、子どもたちが楽しんで、何度も読んでほしい、語ってほしいといった昔話や絵本を元にすることもできます。
たとえば、子どもたちが『そらいろのたね』*7の絵本が大好きだったら、絵本を楽しむのみでなく、そらいろのたねや小さな家の粘土工作を行ったり、いろいろな動物に変身して順に家に入っていく遊びをしたり、「わあ、すてき、これ、ぼくのおうち」というせりふを応用して遊んだり、動物たちが家から飛び出す様子の遊びなどをくりかえし行ったりするなど、さまざまな遊びを行い、最終的に、衣装や簡単な舞台装置をつくって、指導者が脚本をつくり、保護者に見せる劇として仕上げていくことができます。
子どもたちが慣れ親しんだ物語であれば、演じる緊張感も少なく、自らも楽しみながら演じることができるでしょう。そのためには、絵本や物語などをさまざまな方法で遊び、絵本から空想の世界である劇あそびの世界へ、劇あそびから子どもたちの日常の生活へという循環がくりかえされるような活動が重要です。
*注1.前者は、小池タミ子著 後者は、小池タミ子・平井まどか編、晩成書房、1990、1991 *注2.「劇あそびシリーズ1」、岡田陽他監修、玉川大学出版部、1987 *注3.花輪充著、日本幼年教育研究会・メイト共同刊行、2005 *注4.わたなべめぐみ著、チャイルド本社、2008、2011 *注5.花輪充著、フレーベル館、2003 *注6.太宰久夫編、玉川大学出版部、2008 *注7.なかがわりえこ文、おおむらゆりこ絵、福音館書店、1967
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