29.「若者讃歌」

ささやかな季節の変化に気づくためには
どこかで少し立ち止まらなくてはいけない
池の傍
舗装していない道の端
田畑の畦
波打ち際
橋の上
ビルとビルの隙間
スクランブル交差点のど真中
養護老人ホームの入り口
小学校の校庭が見えるビルの屋上
公園の水飲み場
……
それと
覗き込んだ鏡の中

なあんだ、変わってるじゃないか……と最近つくづく思い知らされたことがある。いや、むしろ全然変わっていないことに気づいたというほうが正確だろう。常々、「最近の子どもたちは自分から作ることをしない。たくさんあるものから選ぶことには長けていても、無から自分なりのものを作り上げることはしない」と嘆いていたのだが、いやいやそんなことは全然なかった。

オリジナルのフィギュアやその衣装をネットで販売し、オリジナルのコスプレ衣装や仮面を受注生産し、自分で撮った写真を絵葉書にしてブティックに持ち込み、自作のコミックや文芸作品を製本して、挙句会社そのものを立ち上げる……自分たちが着たいものを着、自分たちが履きたいものを履いて、自分たちが食べたいものを食べる。自分たちが居心地のいい空間を作り出し、そこで自分たちが演じたいパーフォーマンスをやって、自分たちで楽しむ……。

そんな若者の生きざまは、プロとアマチュアの垣根を軽々と飛び越え、メジャーになれば儲かるけれど、メジャーにならなくてもそれなりにやっていける……これは、かつてわれわれの世代が夢に見た生活ではなかっただろうか。やりたいことを我慢して、会社に忠誠を尽くし、妻子を養うことに生きがいを見出すしかなかった親世代に対抗し、われわれが価値を置いていたオリジナルな生活……。われわれではなしえなかったけれど、次の世代が実現している生活。それを守っているのが実はわれわれだということに、彼らはきっと気づいていないのだろうけど、それが若者の特権かもしれない。