『中国文明史』を推す。陳舜臣
歴史好きの人は、歴史をよみながらその情景を心にうかべようとする。文字がならんでいるだけの史書は、心にうかんでくるまでに時間がかかる。その意味で創元社から出版される『中国文明史』全十巻は、すばらしい企画であると思う。座右に置くのに適当な量に分冊され、いつでも参照することができる。たとえば私は三国志の魏の一族を小説にかいているが、第四巻 『秦漢 雄偉なる文明』と第五巻『魏晋南北朝融合する文明』をしばらく見ているうちに、その時代の人びと、中原と辺境のありさまが、しぜんに頭にはいってくるのだ。
私は敦煌や各地の壁画や文物を、時代を知るよすがとしてきた。あまりに薄暗く、もどかしい思いをしたものだった。芸術的価値よりも資料的明快さをめざしたこの『中国文明史』は、私にはうれしい出版である。中国のあらゆることが、日本にとっては重要になってきた。中国の歴史を知ることはその第一歩であろう。本書の文章もよくこなれていて、これが両国の理解の一助になれば幸いである。

第1巻

先史・文明への胎動

第2巻

殷周・文明の原点

第3巻

春秋戦国・争覇する文明

第4巻

秦漢・雄偉なる文明

第5巻

魏晋南北朝・融合する文明
 

第6巻

隋唐・開かれた文明

第7巻

宋・成熟する文明

第8巻

遼西夏金元・草原の文明

第9巻

明・在野の文明

第10巻

清・文明の極地