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心理療法の未来

その自己展開と終焉について

田中 康裕 著

刊行年月日:2017/10/13
ISBN:978-4-422-11670-9
判型:四六判 188mm × 128mm
造本:並製
頁数:320頁

終焉の時はすでに始まっている。

「近代の意識」と不可分に結びついて始まった心理療法は、ポストモダンの時代を迎え、もはや成立しがたい状況に直面している。現代の精神病理を代表する解離性障害や発達障害は心理療法をどう変えたのか。現代の意識の特徴である「サイコロジカル・インフラの消失」とはどのような事態か。人類の精神史において心理療法というプロジェクトがどのように展開してきたのか、そのプロセスを解き明かし、今日の在り方を根底から問う。

〈目次〉

はじめに

序章 今日の心理療法の在り方
1 精神分析による「治療」概念の越境
2 ユング心理学における「個性化の過程」の概念
3 神経症による新しいこころの「治療(セラピー)」の創造
4 心理療法の「基部構造」としての「自己関係」「自己意識」
5 今日における「サイコロジカル・インフラ」の消失
6 二十一世紀における「今日の心理療法の在り方」

第I部 心理療法と「近代」――ユングの三つの夢を通して

第1章 神話的世界へのイニシエーション――ファルスの夢
1 ファルスの夢
2 「人喰い」としてのキリスト
3 地下の世界へのイニシエーション
4 王と王の息子
5 あれが人喰いなのよ

第2章 「近代の意識」の本質――影入道の夢
1 影入道の夢
2 No.1人格とNo.2人格
3 あかりの位置――イニシエーションの新しい在り方
4 心理学における「自然」
5 心理学と「近代」

第3章 神話的世界の埋葬――家の夢
1 家の夢
2 フロイトとの出会いと連想実験
3 神話的世界への没入と精神分析運動からの離脱
4 古き「異端」への傾斜と個人神話の発見
5 神話的世界の埋葬――「近代」という時代精神に課された課題
6 ユング以降を生きるわれわれの課題

第II部 心理療法における「近代」と「前近代」

第4章 心理療法の始まりと「意味の病」
1 近代の心理療法と近代以前の呪術・シャーマニズム
2 「病の意味」と二つのブラックボックス
3 無意識の発明
4 意味の病
5 おわりに

第5章 心理療法と錬金術の論理
1 自然に反する作業(opus contra naturam)
2 結合と分離の結合
3 錬金術師の意識
4 「石(ラピス)」としてのイメージ
5 汝の内以外に汝の救いなし――眼前の「レトルト」への専心
6 心理療法の「方法論」としての「前近代」

第6章 心理療法の本性としての〈非治療性〉
1 医学と心理療法
2 真理へと至るための「想起(ana-mnesis)」
3 事象の背後に動くものを「見通す」心理学的診断
4 「転倒した世界」としての心理療法
5 瞬間の「出会い」とその無限の反復――「見立て」から「治療」へ
6 心理療法の全体解としての「心理学的診断」

第III部 心理療法と「現代の意識」

第7章 心理現象としての解離
1 ヒステリー性せん妄を呈したある症例から
2 「近代の意識」と「解離」のかかわり
3 「解離という病」の自己展開
4 解離性障害の心理療法
5 おわりに――解離性障害と発達障害とが形成する「スペクトラム」

第8章 発達障害は心理療法をどう変えたのか?
1 「対象」によって常に改訂されるという心理療法の本性
2 「発達障害」による心理療法の無効化
3 「発達障害」の心的世界――未だ生まれざる者たちのこころ
4 「発達障害」による心理療法の改訂
5 おわりに

第9章 ユビキタスな自己意識とその心理療法
1 今日における新しい意識の在り方
2 二世界構造をもたないユビキタスな自己意識
3 ユビキタスな自己意識の精神病理
4 「心的未生」の心理療法における留意点
5 おわりに

終章 心理療法の終焉
1 心理療法という「共同体」
2 心理療法への社会制度の介入――裁判と保険
3 「科学」としての心理療法
4 リスク回避とコストパフォーマンス重視の「治療」と「訓練」
5 心理療法の非科学性・非効率性
6 心理療法が夢から醒めること

補章 心理療法家に求められるもの――カフカの『掟の門』をめぐって
1 心理療法家の資格
2 門口で立ち尽くすこと
3 内面化された基準にふれること
4 眼前のものへのコミットメント
5 日常の意識を後にすること
6 「個別性」に目覚めること
7 心理療法において「変わらぬもの」と「変わりゆくもの」

おわりに

文献
索引

※著者紹介は書籍刊行時のものです。

田中 康裕著
田中康裕(たなか・やすひろ)
1963 年生まれ。上智大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(心理学)、ユング派分析家、臨床心理士。現在、京都大学大学院教育学研究科准教授。専攻は臨床心理学。主な著書に『魂のロジック』(日本評論社)、『大人の発達障害の見立てと心理療法』(創元社、共編著)、『発達の非定型化と心理療法』(創元社、共編著)、『発達障害への心理療法的アプローチ』(創元社、共著)、『「発達障害」と心理臨床』(創元社、共著)、『心理療法の交差点2』(新曜社、共著)などがある。

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