24.無駄?

親なんかに言っても無駄……
先生なんかに言っても無駄……
大人なんかに言っても無駄……
政治家なんかに言っても無駄……
誰に言っても、何をしても無駄……
どうせ無駄だから、気持なんて言わない
どうせ無駄だから、疲れることはしない
どうせどうせ無駄だから
……面倒くさい


気持を表現しない若者たちに理由を問うと、彼らは決まって「無駄」だという。尋ねてみればいいじゃない? 頼んでみればいいんとちゃう? お願いしてみようよ。要求すれば? なだめようがすかそうが、彼らは口をそろえて「どうせ無駄じゃん……面倒くさい」と切り捨てる。

そんな若者たちを見て、「造反有理!」だの「ソーカツ!」だのと叫んでいた団塊の世代のオヤジたちは、「根性ないのか!」、「魂腐ってるのか!」、「世の中に文句はないのか!」と恫喝(どうかつ)する。いや恫喝まではしないにしても、内心でその臆病さにイライラしたり、歯がゆい思いを抱いているに違いない。それが証拠に、カウンセラーが彼らの気持に耳を傾けよう……などと言おうものなら、「そんな甘っちょろいことを言ってるから、彼らが甘えていつまで経っても大人になろうとしないんだ!!」と、矛先がこちらを向いて飛んで来たりするからである。

面倒くさい……出し惜しみするエネルギー。本気になったことがないから、いったいどれほどの力が、エネルギーが自分に備わっているのか、皆目見当もつかず、とりあえず出し惜しみ……面倒くさい。でもホントは自分でも思いがけないほどエネルギーを溜め込んでいるものだから、そうしてたまった怒りや鬱憤を晴らす術を持たないものだから、いったん爆発すると人を殺しかねない。キレたら、やってしまいかねない。それが怖くて、ますます人と関わらないようにしている……。

「リアルな人は、実は優しい」……ネット中毒に陥っていたある人が、実際に人と付き合うようになって語ってくれた言葉だ。電脳空間では生身の誹謗中傷が飛び交うが、面と向かうと、人は決して怖くない。信じられない、腹の底では何を考えているか分かったもんじゃない、そんな奴らに何を言っても無駄……そう思っていることは百も承知だけれど、おせっかいな僕らは彼らの文句に耳を傾けながら、「ちょっとだけ、やってみる気にならないかなあ……」と呟いてみたりするのだ。