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30のキーポイントで学ぶ マインドフルネス認知療法入門
レベッカ・クレーン著/大野裕監修/家接哲次訳

  • 精神療法 37巻3号
  • 熊野宏昭氏評(早稲田大学人間科学学術院)

    本書は、再発性うつ病の寛解期に適用される8週間のグループ療法であるマインドフルネス認知療法(MBCT)に関して、理論と実践のポイントを15項目ずつで簡潔にまとめた入門書である。著者は、イギリスのレベッカ・クレーンであるが、巻頭言をMBCTの開発者であるマーク・ウィリアムズが、日本語版の監修者を大野裕先生が、そして訳者をコロラド大学でMBCTを学んで来られた家接哲次先生が担当するという贅沢な布陣で、このたびわが国でも読めるようになった。訳文もとても素晴らしい出来映えであり、MBCTを初めて学ぶ読者にも理解しやすい良書に仕上がっている。
    マインドフルネスが精神療法や医療の中に本格的に導入されたのは、マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)を開発したジョン・カバットジンによってであるが、MBCTは全面的にMBSRに依拠しながら、治療対象を再発性うつ病に絞込み、認知行動的な基礎研究の成果を踏まえることで開発された。マインドフルネスとは、2500年前にブッダが強調した「体験に対してある特定の方法で注意を向けることで現れる気づき」のことであるが、本書ではそれが、体系的な手順を通して養われる今この瞬間への気づき、体験と一緒にいることへの意欲・優しさ・興味という特徴を持った態度、人間の脆弱性についての具体的な理解、といった3つの要素から構成されていると説明されている。
    ここで、この3つのうちの最初の2つがマインドフルネス実践の方法論であり、3つ目がその目標であると考えてみると、マインドフルネスと認知行動療法の接点が理解しやすくなる。すなわち、マインドフルネスの実践によって人間の「全般的な脆弱性」の理解が得られ、再発性うつ病に関する基礎研究と認知行動療法的なアセスメントによって個々の患者の「特定の脆弱性」が明らかにされるため、MBCTでは「マインドフルネスの動的・瞬間的・対応的な側面を、標的としている精神病理の発生、維持要因の明確な理解につなげる」ことが可能となるのである。より具体的に言うと、再発性うつ病患者では、誰にでもある気分の落ち込みや、その際にふと頭に浮かぶ考え(自動思考)で、以前のうつ病相で持続していた反すう思考や回避行動を中心とした認知行動パターンが再活性化されるという知見が得られており、そういった心の動きに対して距離を置いて(脱中心化して)気づき、そのままにしておく(「することモード」から「あることモード」にギアチェンジする)という基本的な介入方法として、マインドフルネスの方法論が役立てられている。「あることモード」とは、あらゆる体験と今この瞬間に出会い続けることを意味しており、それを繰り返し実践することによって「どんなことが起きても、"向き合う"ことができる」力が育っていく。それは、未曾有の大震災に襲われたわが国に生きるすべての人々にとっても、今まさに必要とされている心の持ち方と言えるのではないであろうか。

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