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校正のこころ
大西寿男著

  • 新文化 2009年12月3日
  • ウチのイチ押し
    校正者が書いた画期的な校正・出版論


    活字(デジタル・フォント)を駆使して、誰もが自分の考えや情報などを不特定多数の人に自由に発信するようになった今、言葉は未だかつてない変化と荒廃の危機にさらされている。そんななかで言葉を尊重し、本来あるべき姿を守って行くのが、出版の大切な仕事のひとつである。
    そのプロ中のプロが校正者だ。創元社が11月20日に刊行した『校正のこころ 積極的受け身のすすめ』(大西寿男著、本体2000円)は、言葉を正し整える者としての校正者の立場から書かれた画期的な校正論。著者は20年以上、校正者として数多くの現場に携わり、様ざまな出版物を世に出す手助けをしてきた。出版の仕事でも「裏方中の裏方」とされ、理解や評価を得にくい校正の仕事、とくにその「思想」について、自分なりの考えを述べたいと、15年来温めて来たものを中心に1冊にまとめた。
    校正に関する本は、技術解説書や回顧譚の類が多いなかで、本書は校正の起源や歴史、校正という行為の意味・役割、仕事をするうえでの心構え、第2の出版革命ともいうべきDTPと校正の将来など、広範なテーマを取り上げている。興味深い指摘や示唆、該博な知識も盛り込まれ、ユニークな出版論、出版文化論の側面も併せ持つ。
    たとえばデジタル化でローマ字入力が主流となり、日本語をローマ字というまったく別の表音文字に"翻訳"する必要が生じたことで、万葉仮名以来の大変革が、今静かに進行しているのかもしれない、と著者はいう。またパソコンや携帯の画面上の延々と続く文章はページ感覚を喪失させ、2000年来の冊子本以前の、巻子本の復権を感じさせる、とも。
    文中で繰り返し述べられ、サブタイトルにもある「積極的受け身」とは、著者が考える校正者の理想のあり方を示すとともに、人としての基本的な生き方にも通じると思わせる。巻末にはQ&A方式で、校正・出版の仕事に関する具体的な悩みや疑問と答えを収録。出版関係者はもとより、本や言葉の世界に興味をもつ一般読者、出版業界をめざす人びとにとって、一読に値する書である。

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