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観点変更
今中博之著

  • 週刊読書人 2009年11月13日
  • 瀬尾真志氏(エッセイスト)評


    美術と福祉をつなぐ活動
    「社会性のある企て」がデザインだ


    (前略)
    著者はデザイナーである。空間設計業界大手の会社のデザイン部でサラリーマン経験が長い。四肢の発達に障がいを持ってうまれた。明治生まれの祖母に大切に育てられた。「おばあちゃんから注いでもらった無償の愛は現在でも私の生きるすべての力だ」という。父は大工だった。母は友禅染めをやっていた。祖母、両親はみな整理整頓が得意であった。デザインの原点・整理整頓を肉親の生き様から学んだ。身体の不自由は進行していった。壁にぶつかる。ひきこもる。あるとき、生まれて初めて障がい者のリハビリ施設に通った。通所していた男に声をかけられた。いままでの人間関係にない「緩やかなもの」をかんじたという。障がい者とおもわれたくない我と欲が解け、同時に閉ざされた障がい者の世界に己が入っていった。人とのふれあいで観点が変更していったのだ。今、著者は知的に障がいのあるアーティストの作品を日本とアメリカを拠点に発信している。美術と福祉をつなぐ覚悟で活動を続けている。「社会性のある企て」がデザインだと思えるようになった、という。人間は一人で生きているのではない。著者は祖母に愛され、恩師や友と出会い、本を貪り読む。この心温かい本を子供たちによんでもらいたい。間もなく、京都にアトリエインカーブのギャラリーがオープンする。来年、浜松・東京・NYにて展覧会が行われる。

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