
紙の歴史
ピエール=マルク・ドゥ・ビアシ 著/丸尾敏雄 監修
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歴史と地理 世界史の研究 07年2月号
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世界史における紙といえば、多くの生徒が「パピルス」「製紙法」「蔡倫」「タラス河畔の戦い」などの語句を連想するのではないかと思う。その他、世界史の
授業で紙を扱う単元としては、宗教改革において紙と活版印刷術の普及が果たした役割について考察させる場面を思い浮かべるかもしれない。
本書は、副題にもあるように、二千年にわたる紙についての通史である。単に生徒の興味関心を喚起するだけでなく、各時代・各地域の社会について問題意識を
持って考えさせることができるような新しい知見も豊富に盛り込まれている。そのような記述をいくつか羅列することで、本書の紹介に代えたい。
第一章は、中国を中心とした東アジアについて。ともに中国で発明された技術である紙と絹には、桑という共通項があること(詳しくは本書参照)。七世紀における長安の書院とローマ教皇庁図書館の蔵書数の比較。
第二章は、八世紀に製紙法が伝わってきたイスラム世界における紙について。イスラム世界でパピルスや羊皮紙に代わって紙が急速に普及したのは、アッバース
朝やファーティマ朝において官僚体制が発達したためであったこと。にもかかわらず、コーランは一九世紀まで印刷されることがなかったこと。
第三章は、ヨーロッパについて。一三世紀にヨーロッパで製紙業が発達した背景として、亜麻の衣服への嗜好の変化が指摘できること(紙の原料は古着で、亜麻
の繊維は紙に適していた)。ナントの勅令の廃止によって製紙職人も国外に逃れたために、印刷におけるフランスの優位が崩れてしまったこと。
第四章は、近代における紙。木材を原料とした製紙技術は、一八六〇年以降に一般化した新しい技術であること。
第四章の後半では、義務教育の普及、識字率の高まり、新聞や投票用紙など民主主義の実践には紙が不可欠であったことに言及している。考えてみれば当然の指
摘であるが、近代市民社会成立の意義について考察する上で紙が欠かせないモノであることをあらためて意識させられた。第五章は現代社会における紙の役割に
言及しているが、紙幅が尽きたので省略する。
本書を通読すると、授業において紙をもっと積極的に取り上げてみたくなるはずである。もしかしたら、これまで紙を断片的にしか扱ってこなかったことが悔やまれてくるかもしれない。そんな一冊である。
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