
ライバル日本美術史
室伏哲郎 著
大倉宏氏評(美術評論家)
個性の対比で興味を誘う
(前略)
本書は、そうした日本美術の常識的知の普及書であり、良書である。膨大な知識を惜し気もなく次々繰り出すあたり、知的なビジネスマンに好まれそうな気配を
持つ。というか、知的ビジネスマン諸子はぜひ読まれたい。ビアホールや居酒屋でスーツ姿の若い男たちが魯山人や春章や応挙について口角泡を飛ばして議論す
る光景が日常になったら、日本はすごくかっこいい国になる。
教養を常識に移動させる作業(あえて作業と書く)には工夫がいる。本書の場合はライバル ─
同時代の同じ(類似する)ジャンルの、違う個性を持った作家を対にして、平安時代から平成時代までの美術を語るプロットがそれにあたる。半分くらいは、実
際のライバルと見なすには無理があっても強引に対にしてしまったのが工夫で、日本美術史に少年マンガの感覚で入りこめるだろう。
対で見る視点のもう一つのよさは、違う個性を通して時代の特質と幅が見えやすくなる点。それを会社の特質と幅と見て、同じ状況でどう「自分」を生かしてい
くか、社を飛び出し自立する雪舟でいくか、契約社員でスタートし抜擢されていく相阿弥を目指すかと、我が身に引き寄せ読むのも面白いだろう。
今で言う「個性」で勝負した男たちの物語。彼らのナマの業績(作品)に触れるための美術館ガイド、分かりやすい脚注、コラムなども充実し、縁なき大人が手にとり日本美術の山野を歩き始める、よきガイドブックにもなっている。
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