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世界の古代遺跡
アンリ・スティルラン 著/森山隆 訳

  • ビーパル 07年7月号
  • 最近の世界遺産ブームのせいもあって、古代遺跡を扱う本が次々に出版されている。本書も、地中海に浮かぶマルタ島のイムナイドラの巨大神殿から、南米アン デスのジャングルを見下ろすマチュ・ピチュにいたるまで、世界29か所の古代遺跡を写真で紹介する点ではブームの一翼を担うといえるだろう。
    だが本書は、航空写真をうまく使用することで、一頭地を抜いた古代遺跡図鑑となっている。ひとつの遺跡について使用される写真はきっかり4枚。そのうち2枚が航空写真なのだが、1枚は要所をアップで捕らえ、もう1枚は全体像を写し出す。
    とくにこの全体写真からは、遺構のスケールを容易に把握できるし、現在の遺構がどんな環境の中で発見され、どのように発掘・保存されているかもひと目で理解することができる。
    たとえば上にあげた写真(省略)は、西暦79年8月24日に大噴火したヴェスビオス火山によって廃墟と化したイタリアのポンペイの遺構である。2方向が丘 陵に接し、2方向には畑が広がっている。この古代都市が発掘される前は、この畑を作っていた人たちに、この遺構はどのように見えていたのだろうか。そして 今は森になっている部分にも、また遺構が埋もれているのではないか。そんな想像が働いてわくわくしてくるのだ。
    同様に、砂漠の中に聳え立つスーダンのピラミッド、シリアのパルミラ、中国西域の交河故城など、どれもが遺構の広大さと古代人たちの営みのすごさを実感さ せてくれる。何しろこの視点は、実際に現場に足を運んだからといって、ヘリでもチャーターしない限り目にできないという点がすごい。
    しかもこの航空写真は4つに折りたたまれており、それを広げるとこの本のサイズの4倍(縦390mm、横530mm)の大きさとなる。この写真の大きさも本書の魅力のひとつだ。
    たったひとつ心配ごとがあるとすれば、この4つ折りされたメインの写真の折り目が、やがて擦り切れて、写真が見づらくなるのではないかということかもしれ ない。だが、これが擦り切れるということは、図鑑として何度も眺められた証しであり、それは本書にとっては十分幸せなことであるにちがいない。
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