
強制収容所グーゼンの日記
アルド・カルピ 著/川本英明 訳
人間の尊厳のありかを教える
ナチスの収容所体験の記録の中でも本書が際立ってユニークなのは、それが回想ではなく収容所のガス室や焼却炉の傍らで書かれたことだろう。反ファシスト運動を密告されグーゼンの収容所へ送られたイタリアの画家アルドは、収容所で隠れて日記を書いていた。
日記は妻マリアへの手紙の形式をとっている。収容所生活の具体的な記述を避けながらも、画家は人間の心と行為のありようを克明に見つめている。
(中略)
画家だった彼はSS隊員のために絵を描いて生きのびることができた。解放後の収容所で自由を与えられた画家は収容所の真実を描く。焼却炉前の死体の山や亡
霊のような囚人たち
──。日記には、繰り返された虐殺や囚人たちの人間模様も詳細に書かれている。残虐極まりない収容所で、思いやり深い人たちの姿がとりわけ印象的だ。深い
宗教性を湛え、人間の尊厳のありかを教えてくれる記録である。
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