夜の記憶
澤田愛子 著
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早稲田学報 05年12月号
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樋口義彦氏評(文化人類学者)
他人の暗い過去の話なのではない。アウシュビッツ訪問で人生観が変わるほどの衝撃を受けた著者が、サバイバー一人ひとりに丁寧に歩み寄ろうとする。その息遣いを手に感じながら、四百頁を一気に読ませる。十二人の「記憶」をともに経験した充足感が、ホロコーストを、教科書で呼んだ過去の、他人の歴史から、新しい、私の「記憶」へと変える。サバイバーの幼少時代、青春時代の日常にポツポツと滲む黒い点。その日常との複合的な「記憶」に向かって、著者が真正面から飛び込み、語られる「記憶」に涙し、動揺し、それでも学者として冷静でいることを忘れない姿勢が貫かれている。
活字が氾濫し、文が短くなる昨今。時に言葉を選び、時に感情を抑えきれず語られる、決して短くすることのできない、現在と過去を往復する一人ひとりの声は、読書が新たな時代を「記憶」することにつながることを教えてくれる。
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