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夜の記憶
澤田愛子 著

  • みるとす 05年6月号
  • 先の大戦から六〇年を経た本年、世界各地であらゆる記念事業が行われている。今年は、大戦終結と同時に、ホロコースト解放より六〇年でもある。
    日本でも、ホロコーストに関する本はある程度出版されている。しかしその多くは翻訳本であるか、もしくはそれを元に書かれた「二次史料」的なものである。そういう意味で、サブタイトルが示すとおり、本書は日本人が書いた、ホロコースト証言に関する初めての「一次史料」である。
    約四七〇頁に及ぶ本書は、大きく三つにわけられる。一章の「ホロコーストとは何か」ではその歴史的背景を追い、二章ではホロコースト・サバイバー(生還者)に関して述べている。そして三章では、著者がインタビューしたサバイバーたちの証言、そして実際に足を運んだ複数の強制収容所を紹介している。この三章が、本書の八割以上を占めるメーンである。
    一九九八年から毎年イスラエルに行き、合計約三十名のサバイバーへインタビュー(ミルトス社員が協力)。そのうち十二名の貴重な生の声が収録されている。
    サバイバーにとって、想像を絶する過去の体験を語ることは、六〇年経った今も多くの困難を伴う。その上、みな高齢である。それでも多くの方がインタビューに応じたのは、彼らが後世に伝える必要性に迫られていることと、著者との信頼関係によるものであろう。これは、日本人として、十分に評価されるべき点である。
    日本でも十年ほど前に、ホロコースト否定説を紹介した某雑誌があったが、日本人には今でもなじみが薄く、まだまだ誤解の多いのがこのホロコーストというテーマであろう。
    長年にわたるホロコースト研究と実際の証言に裏打ちされた書が、日本人の手によって発刊されたことの意義は大きい。
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