文・栗本智代、写真・小谷 光

【著者プロフィール】
栗本智代(くりもと・ともよ)
1965年吹田市生まれ。大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所主席研究員。奈良女子大学卒業後、大阪ガスに入社。1991年より現職。大阪の活性化の一環で、都市の個性や魅力を、歴史や文化的側面から探求。「なにわの語り部」公演活動も展開する。著書『大阪まちブランド探訪』(創元社)、『大阪水の都に浮かぶ劇場』(KBI出版)など。
創元社
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東横堀川界隈

大阪最古の城下町で、新旧の本物に出会う

同年代に誕生した、「本町橋」と「ゼー六」

「本町橋」は、公儀橋の1つで、船場のメインストリートであった本町通りと大阪城を直結していた。1913年(大正2)に、市電の開通事業に伴い鉄橋化され今日に至る。なかなかしゃれたデザインだ。
「この本町通をずっと西にいくと"木津川橋"があったのですが、双子のようにデザインがほぼ同じでした。かつてシティプラザ大阪の場所に大阪府庁が2年間だけあり、1874年(明治7)に木津川橋に隣接する江之子島に移ったので、旧府庁の表玄関にあったギリシャ神殿風のデザインを参考にしたのではないかと考えています」と杉本さんが説明する。
 本町橋と同じ年代に創業したのが、喫茶・アイスクリーム屋の「ゼー六」である。
「有名なアイスモナカを試食しましょう」と道端から注文。バニラ味のアイスにパリッと薄くて白いモナカ地の素朴な味わいがたまらない。「10個以上で夏は20~30分、冬は40~50分」と張り紙がある。テイクアウトでのモナカの持つ時間である。ドライアイスを用いないため、モナカをぎゅっとくっつけて、新聞紙で4重にも5重にもくるむと、互いの冷気で溶けにくくなるという。特に暑い時期は、会社の社長秘書をはじめ、ビジネスマンや地元の人が絶えず買いに来るそうだ。

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濱田屋珈琲―季節の自然を愛でながら

 コロンビアをベースにした自家焙煎コーヒー。そのコーヒー風味をしっかり盛り込んだシュークリーム。本町橋の西北詰には、ゆったりとコーヒーやスイーツを楽しめる贅沢な空間がある。杉本さんもおすすめの店だ。
 1986年(昭和61)開店。オーナーの濱田淑子(はまだとしこ)さんが、郊外の美しい自然をイメージしながら都心で60件ほど探しに探した結果、気に入った場所である。
「自家焙煎珈琲濱田屋」というマークや店のデザイン・レイアウトは、甥のデザイナー村田智明(ちあき)さんに依頼した。「全面窓ガラスをつくらせました。ここから窓を通して外の緑を見ていると、自然が額縁に入っているみたいでしょ」。外観より、店内で座って外を眺めた方が、より周辺の緑が美しく思え、あたかも森の中にいるようにも感じられるから不思議である。窓際からは川や船、本町橋も見える。
 珈琲はパンチのあるコロンビアベースだ。「深煎り、中煎り、浅煎りとタイプを分けて焙煎しています。一級品しか選ばず、状態を確認しながら使用しているので、味には自信があります」と力強く話す濱田さん。
 スイーツを模索していた頃、とあるケーキ屋で「南蛮窯バッケン」と出会い、「この窯なら、自慢の洋菓子がつくれるはずだ」と入手先を確かめ、すぐに発注した。「密閉度が高く、細かい工程での温度設定がきっちりできる魔法の窯です。シュークリームのシューは、牛乳しか使わない生地でもふわっと美味しく焼けます」。高級なカルピスバターを使用し自信のコーヒーをクリームに入れた"珈琲シュークリーム"を名物にしようと考えた。いただいてみると、とろーりと滑らかなクリームには、しっかりコーヒーの風味が。さっくりしたシューとあわせて、やみつきになりそうだ。
「以前に川向こうにあった桜の木が、工事で抜かれてしまって、本当にさみしいんです。春の愉しみがうんと減ってしまいました」と、濱田さんは、景観があってこそ人の心のやすらぎがあるのだと主張する。まちの魅力を借景とした、オリジナルコーヒーやスイーツが自慢のカフェ。まち歩きをより愉しむには休憩に是非こんな店を選びたい。

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