半世紀もの長い眠りから覚め、
C・G・ユングの非公開の書がついに公刊。
16年余りの長きにわたり、ユングが私的な日記として自ら手書きで緻密に書き綴った『赤の書』。
そこには、その後のユング思想の中核となるものがすべて記されていた。
しかし、さまざまな理由から『赤の書』は黒いトランクに入れられ、スイスのとある銀行の金庫の中で半世紀近くのあいだ眠りつづけることになったのである。
その伝説の書物が、2009年10月、ようやく日の目を見ることになった。
細かな部分まで丁寧に描き込まれた大小さまざまな極彩色の美しい絵の数々、綿密な構成のもとに、ページぎりぎりまでびっしりと書かれたカリグラフィーの文字。
さながら「ケルズの書」のような聖書の豪華装飾写本を思わせるこの書を、現物と同じ大きさのまま、日本語訳を付してお手元にお届けします。
◎推薦者の言葉
梅原猛氏(哲学者)

この『赤の書』には、鮮烈な色彩が溢れ、抽象的で象徴的な形体が、飾り文字にまで氾濫する。
ユングはやはり言語的思索者ではなく、イメージの思索者なのである。
しかもその言葉はニーチェのツァラトゥストラにも並び、現代人の自己との対話を紡ぎ出す。
ニーチェがキリスト教徒及びその歴史観と対決し、現在に充溢する力を意志したように、ユングは地獄の修羅へと下降しながらも、恍惚としてこの現在に帰ってくるのである。
中沢新一氏(人類学者)

第一次世界大戦は、ヨーロッパの知性に計り知れない衝撃と動揺を与え、その中から、芸術や文学や思想の分野に、20世紀を代表することになる驚異的な作品が、いくつも生み出された。その戦争によって、人々は文明や魂の根源にまで降り立っていく探究に向かうことを、強いられたのだ。ユングの『赤の書』も、そういう時代の不安の中から生まれた。しかし、ユングの試みた探究は、他の知識人たちのそれをはるかに凌駕して、根源的だった。彼は文明によって押し隠されてきた意識のベールを引き裂いて、人類の心を裸に剝き、矛盾沸騰する原初の心の深みに、深々と降りたっていった。ここでのたうち回っているのは、ユングという個人を超えた、集合的な人類の心そのものなのである。
萩尾望都氏(漫画家)

人の心は深い海のようだ。
その無意識の深層に、ユングはどこまでも潜って行く。
私とは何者か。魂とは何か。
繰り返されるヴィジョンと夢のなかで、ユングは考える。何日も。何年も。
冷静な知性と輝く熱いエロス。
その謎と答えを求め、誰も知らない水底の地図を描いていく。
その地図が、ユングの『赤の書』だ。
ひとりの人間の、世界と魂の物語だ。
横尾忠則氏(美術家)

ユングがある日、『赤の書』を綴っている時、女性の声を耳にした。
「あなたの行っているのは科学ではなく芸術なんですよ」。
するとユングはこの声に憤りを感じてその声に言い返したという。
「これは芸術ではない、これは自然なんだ」と言った言葉がずっとぼくは気になっていた。
そんな『赤の書』が出版されるという。
この書の中に掲載されているユング自身の手による多くの大型サイズの絵(ビジョン)を目にすることができるかと思うと一刻も早く手にしたい。
◎本書の特徴
世界数カ国で翻訳出版
英語版、ドイツ語版、日本語版のほか、世界数カ国で刊行予定。
134 点の美しい絵とカリグラフィー
大判のページいっぱいの絵が53点、カリグラフィーの文字の合間に驚くほど精密に描き込まれた大小の絵が81点含まれる。オリジナルの美しい色合いを忠実に再現するため、カラーページはすべて、優れた印刷技術を誇るイタリアのモンダドーリ社で印刷。
圧倒的な絵の迫力
通常の意識状態からは想像もつかない無意識のエネルギーの奔流。ユングが自己実験と呼んだ《無意識との対決》のなかで、この『赤の書』は書かれた。ここに描かれているのは、まさにわれわれの想像を遙かに超えた、人間の無意識の深遠なる未踏の世界の姿である。
研究者必携の貴重な資料
本書には、ユング思想の中核をなす「元型」「集合的無意識」「個性化の過程」など、その後に展開されたユング心理学の主要な概念の起源がすべて含まれている。本書は、ユングの提示する新しい心理療法のモデルを理解するために、決定的に重要な一次資料と言える。
文学、美術、宗教などへの大きな影響
本書の内容はきわめて文学的な形式をとっており、かつあらゆる芸術領域や、魂の救済を説く宗教領域の人たちにも多くの示唆とインスピレーションを与えてくれるだろう。